「御用だ、御用だ!」——時代劇でおなじみのこのセリフ。捕物帳や時代劇ファンなら、一度は耳にしたことがあるフレーズではないでしょうか。
でも、ふと疑問に思ったことはありませんか?「本当にあんなふうに叫んでいたの?」「“御用”ってどういう意味?」そんな素朴な疑問から、江戸時代の捕り物にまつわる言葉の背景を、やさしく探ってみましょう。
◆「御用」とは、そもそもどんな意味?
「御用」とはもともと、幕府や藩などの“お上(おかみ)”から出される公的な命令や仕事を指す言葉でした。「御用聞き」や「御用商人」といった言い方でも見られるように、“上からの任務”というニュアンスがあります。
町奉行所の役人が、罪人を捕まえる際の行動も「御用」に含まれており、「御用だ!」というセリフには、「これは公的な取り締まりだ、手を出すな」という意味が込められていたとされます。
◆実際に叫んでいた?「御用だ!」の使用例
文献によると、「御用だ!」という言葉は、実際に江戸時代の捕物において使われていた記録が残されています。
たとえば、町奉行所の与力や同心、捕物を担当する岡っ引きなどが、犯人を取り押さえる際、通行人に事情を知らせたり、混乱を防ぐために「御用だ、道をあけろ!」と声をあげることがあったそうです。
現代でいうところの「警察だ!」に近い表現ですね。
◆なぜ「だ!」と断定するのか
「御用です」ではなく「御用だ!」という断定口調が使われるのは、緊急性と公権力を強く印象づけるためでした。
力強い口調で周囲に権威を示すことで、犯人の逃走や抵抗を防ぐ、また周囲の協力を得やすくする効果があったと考えられています。
◆「御用になる」「お縄を頂戴する」などの表現も
江戸時代には、捕らえられることを「御用になる」とも言いました。現代でも時代劇やニュースなどで「御用となった」などと使われることがありますが、これはまさにこの名残です。
「お縄を頂戴する」という表現も同じく、捕縛されることを丁寧に(でも少し皮肉っぽく)言い表したものですね。
◆今でも使われる?「御用」の残り香
現代でも、「御用」と聞くと「逮捕」や「捕まる」というイメージがつきまといます。それは、時代劇や刑事ドラマなどの影響もあるでしょう。
一方で、「御用商人」「御用聞き」といった表現は、徐々に使われなくなってきている一方で、日本語の中に「お上との関係性」を残した名残でもあります。
◆まとめ:「御用だ!」に込められた時代背景
「御用だ!」という一言には、江戸時代の公権力や秩序、そして人々の暮らしが垣間見えます。
時代劇の中のセリフとしてだけでなく、実際に使われていた背景を知ることで、その言葉の重みや意味合いがより深く理解できますね。
これから時代劇を観るとき、「御用だ!」という声に、少し違った響きを感じられるかもしれません。